2014/01/07
〝伊予の大島石朝日を受けて石に黄金の花が咲く″
の石切歌に象徴されるような詩情溢れる山の現場も、
ユンボが唸り大型ダンプトラックが出入りする近代的な採掘現場に様変わりし、
管理会社が進むにつれ、丁場の職人まで全く機械的に管理せざるをえなくなりました。
それにしても昔は、元気な身体と器用さえあればそれでよかったのですが、
免許証に似たそれぞれの作業認定書がなんと七つも必要で、
まったく大変な時代になったものです。
私がこの大島石業界に入って一番驚いた事の一つに、
職人と呼ばれる人達の自分の職場への帰属意識のようなものの低さでした。
自分の意志によっての自由自在の職場移籍は一見無責任に思え、
賃金が安いからなのか、移動が激しいから給与が低いのか、
鶏が先か卵が先かをしばらく考えたものです。
やはり充分な福利厚生にその鍵があるように思います。
もう一つ忘れてはならないのは、仲買業と呼ばれる人達のことです。
十五年も昔には、余所国の海岸には、何時も何隻かの船が切石の積込み作業をしており、
短期間の潮間の作業のせいもあって、
その東京迄も届く程の大声で助手である奥さんを怒鳴りながらの荷役は、
余所国海岸独特の風物詩であったものなのです。
この人達の小型船舶による輸送と販売努力とが、
墓石としての高品質と相俟って何とか食える大島石になったと言っても過言ではありません。
しかし現在では、尺ざし一本とトラック一台あれば、誰にでも開業出来る気安さから、
過当競争ぎみであり、山のお得意さんと加工屋のお得意さんとの板ばさみになり、
その中から利益を生み出すのは、これも中々大変のようです。
丁場師の資金刀の弱さをカバーしたり、また大島石の場合、
採掘現場が狭いものですから、近代産業としての不可欠な安定供給が難しく、
それを補う意味合いに於いて丁場師の間にがっちりと根をおろし、
大島石の第一線の営業マンとして有年の歴史を山と共に歩んできたのです。
仲買業はその歴史も古く、明治三十年代にはもう職業として成り立っていたらしく、
私の家にも先祖が石を買い集め、東京、広島方面に送っていた記録が残っております。
現在の販路は、京阪神、広島、高松、北木島等が大きな消費地になっておりますが、
九州を除く関西一円と言っていいでしょう。
この仲買いなどという古い呼び名で前近代的に見える販売形態ですが,
前述したような歴史からくる丁場師と仲買いの緊密さも手伝って
偶発的にも生産と販売が独立した部門を形成するようになり、
最も近代的である販売形態(例えばトヨタ自工・トヨタ自販)を取ってきていた事に
今さらながら驚きます。
この販売形態が大島石を大きく伸ばした一因でもあったのです。
今後共、御奮闘をお願いしたい販売業者(仲買業者)なのですが、
何しろ重い物を遠い所に運ぶのですから、
深夜に早朝に又、車中の仮眠など日常茶飯事なのです。
それ故その御家族の御心配は、山に働く人々と同様深刻であり、
夕方に夫や息子の顔を見るまでは、その日が終わった気がしないものなのです。
販売業者の皆様、あなたのトラックには大島石だけが積まれているのではありませんよ。
ご家族の愛やご心配が、あなたと一緒にハンドルを握っているのです。御自重下さい。
続く
大島石産出元 ㈲山西石材 小田 和比古
フリーコール 0800-700-1194
▶ 新たな一歩を
▶ 新パンフレット完成
▶ 大島石とせり矢 Vol.277
▶ おじいちゃんから引き継いだ(かのような)コート vol.276
▶ 大島石といのちの旅 Vol.275
▶ 大島石と、サン・テグジュペリvol.274
▶ 大島石と鍛冶 vol.273
▶ 大島石と革vol.272
▶ 大島石と朝の空 vol.271
▶ 大島石と仕上げvol.270
▶ 謹賀新年と大島石 vol.269
▶ 大島石と年の瀬vol.268
▶ 腐らない大島石② vol.267
▶ 腐らない大島石 vol.266
▶ 大島石と故郷 Vol.265
▶ 大島石インスタグラム Vol.264
▶ 大島石と叩きの肉感Vol.263
▶ 大島石と商品開発Vol.262
▶ 大島石と盆灯篭Vol.261
▶ 大島石とスタイルそしてトレンドvol.260
▶ 大島石とアルビノ vol.259
▶ 大島石と地獄谷 vol258
▶ 大島石と布袋草:vol257
▶ 「大島石と伝統工芸」 Vol256
▶ 「大島石と大山石”私が大山石を好きな理由”」 Vol.255
▶ 第254回「ふるさとの国土に眠る」
▶ 第253回「pray for one」
▶ 第252回「決選投票!」
▶ 第251回「大島石とWEBと熱狂の加速」
▶ 第250回「大島石とご神体」
▶ 第249回「大島石とアーバンライフ」
▶ 第248回「不死鳥の石と大島石」
▶ 第247回「大島石とオバマ大統領とアイデンティティ」
▶ 第246回「地獄谷の大島石」
▶ 第245回「大島石とTV放送」
▶ 第244回 「大島石の値段」
▶ 第243回「大島石とグランツ―ㇽせとうち」
▶ 第242回「大島石小割」
▶ 第241回「大島石ジェットバーナー」
▶ 第240回「大島石と日本の原風景」
▶ 第239回「大島石 新規バーナースタート」
▶ 第238回「とりあえずこれ呑んどけ”大島石”」
▶ 第237回「149DC-石工男子」
▶ 第236回「奉安」
▶ 第235回「和を以って貴しとなす」
▶ 第234回「仏道と大島石」
▶ 第233回 「 感性の刺激 」
▶ 第232回「謹賀新年」
▶ 第231回「大島石とノームコア」
▶ 第230回「大島石 産地見学」
▶ 第229回「大島石 地中と宇宙と」
▶ 第228回「安心してください、、、国産ですよ。」
▶ 第227回「祈り」
▶ 第226回「大島石は1000年先まで」
▶ 第225回「弔辞」
▶ 第224回「大島石900万年待ち」
▶ 第223回「大島石と日本の原風景」
▶ 第222回「大島石と霊園」
▶ 第221回「大島石の石肌感触」
▶ 第220回「大島石ランチョンマット」
▶ 第219回「コストダウンの代償は」
▶ 第218回「家族と、友と」
▶ 第217回「大島石のランク③小売店~総括編~」
▶ 第216回「大島石のランク②加工メーカー」
▶ 第215回「大島石のランク①採石所」
▶ 第214回「大島石のランク」
▶ 第213回「自然は好きですか?」
▶ 第212回「大島石特級材」
▶ 第211回「大島石 現場編」
▶ 第210回「大島石と山と空と」
▶ 第209回「25tonもの原石からたった1基」
▶ 第208回「表裏一体」
▶ 第207回「色彩」
▶ 第206回「水と石」
▶ 第205回「目的と手段」
▶ 第204回「自然の産物との対話」
▶ 第203回「god is in details」
▶ 第202回「自然の声を感じること」
▶ 第201回「signal」
▶ 第200回「セオリーの外」
▶ 第199回「key-TOと」
▶ 第198回「広島の盆灯篭」
▶ 第197回「山西」
▶ 第196回「花火」
▶ 第195回「祭りの季節」
▶ 第194回「遠い海から」
▶ 第193回「秘境」
▶ 第192回「人の手がはいることで」
▶ 第191回「お墓のかたち、その意味」
▶ 第190回「出会うべくして出会う」
▶ 第189回「星屑の大島石」
▶ 第188回「完璧でないことがその条件」
▶ 第187回「大島石リフレッシュ」
▶ 第186回「あちらの世界から見る風景」
▶ 第185回「コトワリ」
▶ 第184回「いきもの」
▶ 第183回「春と秋のお彼岸」
▶ 第182回「墓石は石工の仕事でできている」
▶ 第181回「孤高」
▶ 第180回「nippon石博2」