大島石マガジン

第65回「大島石あれこれVOL6」

2014/01/07

〝伊予の大島石朝日を受けて石に黄金の花が咲く″

の石切歌に象徴されるような詩情溢れる山の現場も、

ユンボが唸り大型ダンプトラックが出入りする近代的な採掘現場に様変わりし、

管理会社が進むにつれ、丁場の職人まで全く機械的に管理せざるをえなくなりました。

 

それにしても昔は、元気な身体と器用さえあればそれでよかったのですが、

免許証に似たそれぞれの作業認定書がなんと七つも必要で、

まったく大変な時代になったものです。

 

私がこの大島石業界に入って一番驚いた事の一つに、

職人と呼ばれる人達の自分の職場への帰属意識のようなものの低さでした。

自分の意志によっての自由自在の職場移籍は一見無責任に思え、

賃金が安いからなのか、移動が激しいから給与が低いのか、

鶏が先か卵が先かをしばらく考えたものです。

 

やはり充分な福利厚生にその鍵があるように思います。

もう一つ忘れてはならないのは、仲買業と呼ばれる人達のことです。

十五年も昔には、余所国の海岸には、何時も何隻かの船が切石の積込み作業をしており、

短期間の潮間の作業のせいもあって、

その東京迄も届く程の大声で助手である奥さんを怒鳴りながらの荷役は、

余所国海岸独特の風物詩であったものなのです。

 

この人達の小型船舶による輸送と販売努力とが、

墓石としての高品質と相俟って何とか食える大島石になったと言っても過言ではありません。

しかし現在では、尺ざし一本とトラック一台あれば、誰にでも開業出来る気安さから、

過当競争ぎみであり、山のお得意さんと加工屋のお得意さんとの板ばさみになり、

その中から利益を生み出すのは、これも中々大変のようです。

 

丁場師の資金刀の弱さをカバーしたり、また大島石の場合、

採掘現場が狭いものですから、近代産業としての不可欠な安定供給が難しく、

それを補う意味合いに於いて丁場師の間にがっちりと根をおろし、

大島石の第一線の営業マンとして有年の歴史を山と共に歩んできたのです。

 

 

仲買業はその歴史も古く、明治三十年代にはもう職業として成り立っていたらしく、

私の家にも先祖が石を買い集め、東京、広島方面に送っていた記録が残っております。

現在の販路は、京阪神、広島、高松、北木島等が大きな消費地になっておりますが、

九州を除く関西一円と言っていいでしょう。

 

この仲買いなどという古い呼び名で前近代的に見える販売形態ですが,

前述したような歴史からくる丁場師と仲買いの緊密さも手伝って

偶発的にも生産と販売が独立した部門を形成するようになり、

最も近代的である販売形態(例えばトヨタ自工・トヨタ自販)を取ってきていた事に

今さらながら驚きます。

 

この販売形態が大島石を大きく伸ばした一因でもあったのです。

今後共、御奮闘をお願いしたい販売業者(仲買業者)なのですが、

何しろ重い物を遠い所に運ぶのですから、

深夜に早朝に又、車中の仮眠など日常茶飯事なのです。

 

それ故その御家族の御心配は、山に働く人々と同様深刻であり、

夕方に夫や息子の顔を見るまでは、その日が終わった気がしないものなのです。

販売業者の皆様、あなたのトラックには大島石だけが積まれているのではありませんよ。

ご家族の愛やご心配が、あなたと一緒にハンドルを握っているのです。御自重下さい。

 

続く

 

 

 

 

大島石産出元 ㈲山西石材  小田 和比古

フリーコール 0800-700-1194

 

oda

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