大島石マガジン

第13回「石屋治衛門」

2013/07/01

かように人気な大島石ですが、

もとをたどれば、どのような経緯で発見され、

流通が確立し、現在に至ったのでしょうか。

原石採掘のルーツは、各産地によって様々ですが、

われらが大島石を語るとき、必ず登場されるのが、この方。

石屋治衛門     です。

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じえもん と呼ぶか、 はるえもん と呼ぶかは両説あるそうで、

わたしの父親は、「じえもん」と呼んでおります。

この治衛門さんは、 もとは太閤秀吉が大阪城を築城するときの人夫のひとりであったと言われております。

築城にあたって石積みの技術を習得した治衛門は、

地元今治に帰って来ます。

そして後に藤堂高虎の命により、今治城の築城が始まるのですが、

治衛門は石工の棟梁の一人として召し使えられます。

やがて2年の歳月をもって今治城は完成を見るのですが、

城には、落城に際しての城主の秘密の抜け道 がつきものです。

その抜け道は、絶対に一般に知られてはいけない機密事項のため、

その建設に関わった人間はひとり残らず処刑されることに。

このことを事前に察知した治衛門は、同志をひとり引き連れて、

今治を脱出することを決意します。

月の暗い夜に、かねてから用意していた筏でもって、

静かに川から沖へ脱出します。

そして流れ着いたのが伊予大島であり、

念仏山の奥深くに潜んで、処刑された仲間たちの供養をした、

と言い伝えられています。

※ ”かねつき堂”といわれるその場所は、現在でも石垣が残っております。

その治衛門こそが、石工の技術を用いて大島石原石採掘の祖となった、

という伝承が、最もポピュラーな歴史解釈となっております。

築城、秘密の抜け道、関わった人夫の処刑と脱出と、

とてもドラマチックな伝説ですね☆

日常なにげなく使っている道具や素材にも、

そのルーツやストーリーを紐解くと、とても興味深く、

愛着が沸くものも多くあります。

それは私たち日本人が、

”ただ単に良いもの” ”便利なもの”

ではなく、

”歴史の重みを感じるもの” に

なにがしかのシンパシーを感じる部分が強いからなのかもしれません。

そして、 ”祖を持つ” ということは、今の時代とくに、幸せなことだと思います。

それは精神的なルーツ、拠り所をもつことです。

”祖”を持たねば、歴史もなく、

歴史もなければ、文化もなく、

文化もなければ、国もありません。   国がなければ、、、、、、???

私自身も、こういった ”祖” をより大切にしていきたいと思います。

 

 

大島石”山西”産出元 ㈲山西石材 小田和比古

oda

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