2013/05/25
「オールイン。」
ディーラーにそう伝え、めくられるカードを、息を飲んで見守る。
そんな映画のようなワンシーン。
そこで見事当たれば、投資の何倍もの利益が帰ってきますが、
外れた場合は・・・・?
その投資額は、跡形も消えてなくなります。
文字通り、 何も残らない。
かつて大島石の採石所を始めようとした男たちは、
ほぼこのような覚悟で自分の一世一代の金運を賭けて、
山に挑んだのです。
「スペードのエースさえ出れば、一発逆転、オレの勝ちだ・・・!]
ただし聞くところによると、それは継続的に採石所を続ける、という意図ではなく、
「一発どかんと儲けて土地を買い、安定的な農業を営む」
というのが当時の人の狙いであったそうです。
大島石の採掘事業が始まって100余年、
現在でも本質的に、この賭博的要素は変わっておりません。
自然 という、決して人間の思うようには作用しない絶対的なものを相手に、
常に賽を振り、チップを投げる。
この採石所というもの、
数多ある他の事業と極めて大きく異なることは、
当たらなければ、投資額は0になる
ということです。
設備を買えば、設備は残りますし、
土地を買えば、土地は残りますし、
広告宣伝費を使えば、宣伝効果は決して0ということはありません。
しかし、この採石所ばかりは、
当たらなければ 0 が基本なのです。
一昔前の丁場師を知る業界人の方から見ると、
私たち丁場師とは、金持ちで、偉そうで、鼻持ちならない奴ら、
という評価もあると思います。
しかし当時から、その一見派手に見える生活感は、裏を返せば
こういった途方もない恐ろしさと常に向き合っていることへの反動であり、
決して羨ましがってはいけないと、私自身も先人からこんこんと言い聞かされてきました。
常に投資に投資を重ね、家財道具がなくなるまで追い込まれ、
やっとのことで、 原石 にたどり着いたときは、まさに鬼の首を取ったような
感覚になるものでしょう。
しかし、そこで一時的に得られた利益は本来、やがて来る長い長い投資の時期のために、
しっかりプールしておかなければなりません。
それもこれも含め私たち丁場師とは、
自然という不確かで流動的で、絶対的なものに対して、
その生活や家族を投げ出し委ねている、はかない生き物なのだと思います。
石屋は、宵越しの金は持たない
とは、よくいったものです(笑)
明日の自分は、明日が決める。
明日の命は、明日の山(採石所)が決める。
そうして、「今」に注ぎ込む力が、丁場師たちの、説明不可能な人間的魅力を形成している、
私はそう思えてならないのです。
大島石”山西”産出元 ㈲山西石材 小田和比古
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